面白い小説のネタが思い浮かぶ、オススメの気分転換方法②――〈音楽を聴くこと〉




小説を書き続けていれば、行き詰まってしまうということがあるだろう。

体力的にしんどくて、書くのを続けられないということもあれば、精神が疲弊して、書いていられなくなる、ということもあるに違いない。

書くべきことが思い付かない、面白い話が思い浮かばないといった悩みを抱えている者も、少なくないのではないかと想像する。

そんな時は、いつまでもパソコン画面や、真っ白な原稿用紙と睨み合っていても仕方が無い。

潔く作業を中断して、気分転換を試みてはいかがだろうか。

一時間の気分転換で、また書くことができるようになるならそうすれば良いし、一か月もの期間が必要ならそれでも構わない。

息抜きをして、小説を書くことから離れてみた時に、良いアイディアが湧いて来るということがあるに違いない。

物書き諸氏であるならば、みな諸々に適した気分転換の方法というのを持ち合わせているとは思うが、ここでは、気分転換といっても何をしたら良いかわからない、

どうやったら面白いネタが降りて来るのかわからない、とお悩みの人に、自分が実践しているオススメの気分転換の方法を紹介したいと思う。

もしもここで紹介される方法を試してみても、良いネタが思い浮かばない、面白い話が書けない、という人がいたら、

そのやり方は自分には合っていなかったんだと思って、他のやり方を探求してみて欲しい。自分だけに合った良い気分転換の方法が、きっと見つかるはずである。

もちろん、行き詰ることなんて全然ない、いつだって一気呵成に書き上げてしまうし、ネタだって次々湧いて出て来る、というような天才であるならば、この記事を読む必要はまったくない。



音楽を聴くことは人間を創造的にさせ、その営みを豊かにさせる

結論から言ってしまえば、自分が実践している気分転換の方法の一つは、〈音楽を聴くこと〉である。

〈音楽を聴くこと〉が、インスピレーションをもたらしてくれたり、よいアイディアを閃かせてくれるということがあるのだ。

音楽は良い。

ただぼんやりと聴いているだけで、心が動いたり、感情を豊かにさせられたりする。

『すべては音楽から生まれる』なんていう、大仰なタイトルの本もあるくらいだ。

脳科学者である茂木健一郎氏がそう言明して憚らないくらい、確かに音楽には様々な情動を喚起させ、そして、創造するという行為へと人間を向かわせる不可思議な力がある。

人間の生活を豊かにして、文化的に行為させる原動力としての役割を担っているのだ。

音楽を聴いたことが無いという人間はいないだろう。

音楽は常に、人間の生活と共にある。

街を歩いていれば商店や公共施設から音楽が流れてくることがあるし、

一人部屋に籠っていても、外を走る車から流れる音楽が聞こえてきたり、テレビを点けたならそこに音楽は鳴っている。

母親の胎内に眠っている時からして外界に流れている旋律を鑑賞し、

あるいは母親の心音を音楽に近似した物として享受している訳だから、人間という動物の身体へと音楽が染み付いて、それから離れられないでいるのも当然であるように思う。

そのくらい、音楽という物は人間の生活に密接に関わって、それはもう創作活動をするのとしないのとに拘らず、

言うまでもなく、我々の生活にはなくてはならない物としての地位を確立させているわけだ。

人間の創造性を培わせる音楽に、良し悪しは無い

ではどういった種類の音楽を聴けばインスピレーションがもたらされるのか、

良いアイディアを閃かせるためには何を聴くべきなのかと、答えを欲しがる者もいるだろう。

一般的にはクラシック音楽が良いとされているが、別にそれがすべてではない。

自分も、クラシック音楽の中ではバッハが好きだし、聴くと心が洗われて、清浄とした心持ちにさせられる。

神聖や敬虔をも知覚させて、真摯に創作へと向き合わさせてくれる素晴らしい音楽だと思う。

胎教にモーツァルトが良いというのは有名な話だが、それも直感的にだが理解することができる。

しかし別にクラシックでなくとも、インスピレーションをもたらしてくれるものはある。

良いアイディアをもたらしてくれる音楽、あるいは人間の創造性を育む音楽に、優劣も良し悪しもない。

あなたが聴きたい音楽、あなたの心を震わせて鳴る旋律こそが創造性を高めさせて、良いインスピレーションをもたらしてくれるのだ。

どんな種類の音楽にでも、あなたを作家にさせ、芸術家にさせる力はあるというわけだ。

あなたが深く慣れ親しんだ音楽、例えば青春時代に傾倒していたアーティストの楽曲などは、特に心地良く耳へと聞き入れられて、

あなたの創造性を育んだりアイディアを閃かせたりしてくれるに違いない。

自分にとっても、その創造性を育んでくれた音楽というのはもちろんあって、それらが自分の書いてきた文章へと大なり小なり反映させられた。

以下に、自分の感性や創造性を育んで養ってくれた音楽について、少し紹介してみようと思う。

自分は音楽に関しての専門的知識は無く、特段詳しいわけでもないので、表層的な見地からでしかそれらを語れないが、備忘録も兼ねて、思いつくままに書き記してみることにする。

何か気になる音楽があったなら、それに触れてみることをして、あなたが創作するためのインスピレーションの源泉として活用してみて欲しい。



自分の感性や創作することに影響を与えた音楽――〈ヴィジュアル系〉と〈L’Arc~en~Ciel〉

自分の創造性を育んでくれた音楽を語る上で、先ず挙げられるのは、〈ヴィジュアル系〉とカテゴライズされる音楽ジャンルだ。

広く認知されている音楽ジャンルである反面、色々と誤解を招きやすく、正当な評価を受けにくい音楽ジャンルではあるのだが、掻い摘んで乱暴に説明すると、

〈女性的なメーキャップを施したり、長く伸ばしたカラフルな頭髪を飾り盛ったバンドが表現する、頽廃的・耽美的な歌詞を乗せた、激しかったりメロディアスだったりするロック音楽〉、

とでも言おうか。

まあ、人によって好き嫌いがハッキリと別れて出る音楽ジャンルなわけだが、自分はこの〈ヴィジュアル系〉ロックバンドの音楽を、広く浅くではあるが多く聴いて回った。

〈BUCK-TICK〉〈LUNA SEA〉〈GLAY〉〈MALICE MIZER〉〈DIR EN GREY〉〈GUNIW TOOLS〉……など、聴いてきた〈ヴィジュアル系〉のアーティストを挙げれば枚挙にいとまが無い。

しかし中でも、自分が一番にハマって、よく聴いていたのが〈L’Arc~en~Ciel(ラルクアンシエル)〉だ。

〈L’Arc~en~Ciel〉を〈ヴィジュアル系〉にカテゴライズすると、お咎めを受けてしまうかもしれないが、

ちょうど自分の青春時代にそれを深く見知ったということがあって、彼らの音楽によって感性の一部分が養われたところは大いにあると言えるし、自分が何かを創る時にも多くのインスピレーションをもたらしてくれた。

〈L’Arc~en~Ciel〉の音楽は、ポップな物からマニアックなものまで幅広くあり、

ロック音楽の激しさや荒々しさと、ポップソングとしての聴きやすさ、親しみやすさを兼ね備えていると思う。

しかしその音楽性うんぬん以前に、特に自分が衝撃を受けて、〈L’Arc~en~Ciel〉へとハマるきっかけになったのが、ボーカルでバンドの顔であるhyde(ハイド)氏という存在だ。

hyde氏の、ハンサムというだけでは表し切れない、妖しく異国的な顔立ち、

その妖しく異国的な顔立ちが可能にさせる、楽曲のイメージや世界観を表現するための千変万化する衣装、ヘアスタイル、メーキャップ、

時に妖艶に美しく、淫らに舞いながら歌い上げ、時に喉を掻き壊すような声で激しく叫び、嘆きながら歌うパフォーマンス、

そのどれもがカッコ良く、自分には衝撃的だった。

hyde氏の書く歌詞世界には抽象的で普遍的なものが多く、一見しただけでは何について表現しているかわからなかったりするが、

それでも美しかったり悲しかったり、切なかったりドラマティックだったり激情的だったりして、聴く者の心へと突き刺さる。

〈L’Arc~en~Ciel〉に関しては、この場ではすべてを語り尽くすことができないので、別の機会があれば、その時にでも詳しく書くことができたら良いと思う。

自分の価値観や美学に影響を与えた音楽――〈MOON CHILD〉と〈SCRIPT〉

自分が好きだったのは何も〈ヴィジュアル系〉だけではない。

良いと思ったものは、ポップソングからアニメソングまで、何でも聴くようにしていたし、逆に、流行っているから、売れているからという理由だけでその楽曲を聴いたりすることはなかった。

〈ヴィジュアル系〉以外のポップソングの中で、特に自分が好んで聴いていたのは、〈MOON CHILD〉と、その後継グループに当たる〈SCRIPT〉というバンドだった。

1990年代後期に全盛を誇っていた〈ヴィジュアル系〉とは異なる、シンプルなロック/ポップミュージックのバンドだが、彼らの音楽もまた自分の感性を育んで、その価値観に影響を与えた。

特に、そのボーカルで中心人物であるササキオサム氏(活動時期によって表記ブレがあるのだが、当記事ではカタカナ表記で統一する)の才能――歌詞世界や歌唱表現は素晴らしい。

ササキオサム氏の書く歌詞の世界観には、どこか厭世的で頽廃的、諦念にも似た空気を感じ取って、強く共感してしまう。

ニヒルで、斜に構えていて、この愚かしい世界に、気付かない人間や解っていない人間が溢れていることに辟易して絶望してしまっているのだけど、その反面、

〈今ボクのとなりにいるキミは、こんなにも美しくて素敵さ〉という風な、子供のような純粋さ、あるいは、

〈こんなどうしようもない毎日だけど、蹴り飛ばして踊りながら生きていこうぜ!〉といった向きの清々しさを感じることができて、

生きることや幸福になることを諦めずにいようと思わせてくれる。

またササキオサム氏の歌詞世界には、鮮烈なイメージの固有名詞や、枠に捕らわれない組み合わせをした言葉遊びも多く、例えば、

《アスピリン三錠噛んでベッドメイキング》

(出典『joy of life』作詞・ササキオサム)

とか、

《火遊びしてる稀代のラスプーチン達》

(出典『requiem for the man of nomad』作詞・ササキオサム)

といった独特の言い回しが頻出するのも特徴的で、氏のハイセンスや博識ぶり――映画や小説に多く触れて学んでいるであろうということなどが窺えて興味深い。

歌唱表現としては、短いフレーズの中に目一杯言葉を詰め込んで散りばめる手法が使われることが少なくなく、

マネして歌ってみると難しいが、繰り返し習ってそれに慣れてくると、歌っていて非常に心地良いものになる。

〈MOON CHILD〉は1999年に惜しまれつつ解散、

その後、ササキオサム氏とベーシストの渡邊崇尉氏にて〈SCRIPT〉を結成させるも、そちらも2012年に活動休止してしまう。

〈MOON CHILD〉自体は、その後も何度か再結成と活動休止とを繰り返したりしているが、

ササキオサム氏自身は絶えず何かしらの音楽活動を精力的に行っているので、興味が湧いた方は動画などをチェックしてみて欲しい。

上記の動画は、『ルパン三世のテーマ』をササキオサム氏がカバーして歌ったものだが、めちゃめちゃカッコいいので、興味が湧いた方は視聴してみることをオススメする。

余談だが、ササキオサム氏は、大ヒットソング『ESCAPE』のミュージックビデオでの衣装において、黒いシャツに黄色いネクタイを合わせていることなどから、

キャラクターとしてのルパン三世に影響を受けていることが見受けられる。

有名な、『カリオストロの城』の最後のシーンで、クラリスに対してルパンが見せたような、大人の男のカッコ良さ、あるいはカッコ悪さ、

孤独な男が背負って拭うことのできない哀愁や、情けなさを抱えて生きるということの美学を、

ササキオサム氏もまた標榜して生きているのだと感じ取ることができて、氏のカッコよさに惚れ込んでしまうのだ(あえて孤独と表現したが、氏は既婚者である)。




自分の感性や価値観を育んでくれた楽曲は数多くある

その他にも、好きでよく聴いていたポップソングはたくさんある。

例えば、

無頓着で自分勝手に見えて、その実小心者で繊細な自身を鼓舞するために歌われる〈SURFACE〉の『それじゃあバイバイ』や、

知人や恋人、あるいは自分自身の傲慢に辟易している様子を歌った〈スキマスイッチ〉の『君の話』、

人間の、特に男のカッコ悪さ、情けなさを歌わせたら右に出る者のいない〈スガシカオ〉の『アシンメトリー』などはよく聴いたし、

それぞれの楽曲が主張して掲げている態度は、自分の感性や価値観に大きく影響を与えた。

他にも、〈YUI〉の『LIFE』を聴けば、都会の雑踏の中を独り歩く足にも勇気が込められ、

〈音速ライン〉の『真昼の月』を聴けば、いつだかにしていたらしい失恋や、遠い夏の日の空の、無慈悲なまでに鮮烈なブルーが思い出されて、胸が締め付けられる。

アイドルソングだってたくさん聴いた。

世代的に、自分はやはり〈SMAP〉の楽曲に触れる機会が多く、

『$10』や『ダイナマイト』などノリの良い曲、

『笑顔のゲンキ』や『しようよ』、『らいおんハート』などのキュンと来る曲も好きだが、

『がんばりましょう』『俺たちに明日はある』『たぶんオーライ』『シャレオツ』といった、人生を生き歩むことに付き纏うカッコ悪さや、男の孤独、悲哀を歌った歌を好んでよく聴いていた。

女性アイドルにだって好きな曲はたくさんあって、

自分は根暗な性格だから、〈AKB48〉なら『軽蔑していた愛情』が好きだったし、

比較的最近の女性アイドルで言えば、〈乃木坂46〉の『制服のマネキン』や『生まれたままで』、『僕がいる場所』なども良いと思うわけだ。

アニメソング、特撮の主題歌、ゲームミュージックなどの中にも、自分に創作することへのインスピレーションをもたらして、豊かな感性を育んでくれた物が非常に多くある。

いやむしろ一般的なポップソングよりも、これらのジャンルの中にある楽曲に刺激を受けて、感性を養われたケースの方がより多いだろう。

反感を買うのを恐れずに言えば、アニメソングやゲームミュージックの方が、一般的なポップソングよりも良質であると言える物が多く存在するとさえ思う。

しかしながらこれらについても、この場で語り尽くすには書かなければならないことが多過ぎるので、また別の機会があった時にでも書いてみようと思う。

音楽を聴こう。そして小説を書こう

とにかく、創作への足掛かりとするのに、聴くべき音楽の制限なんて無い。

あなたの心を震わせて、大きく揺り動かした音楽こそが、その瞬間のあなたにとってのテーマソングとなり、創作される物のカラーとなるのだ。

だから音楽を聴いて、創りたいものを創ろう。

心地良いと思う旋律に身を委ねながら、物語を紡ごう。

いや、別に創作活動に勤しまなくたって、音楽を聴くことは、それだけであなたの感性を養って、人生さえも豊かにするから、そのこと自体に意味が生まれるのだと言える。

音楽を聴いて豊かになった心で取り組めば、その創作物は瑞々しい物になると思うし、あなたの人生を生き営むこと自体、素晴らしいものになるに違いない。



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