ライトノベル新人賞を受賞するたった二つの方法




小説家、あるいはライトノベル作家になりたいと考えている者は、未だにとても多いように実感している。

自らの想像力一つでキャラクターやストーリー、世界観を構築し、言葉と文章だけでそれを表現するという職業に、多くの者が惹かれるのも無理はない。

若い時分に、小説やライトノベル、映画や演劇、マンガやアニメやテレビゲームに多く触れてきた者が、年月を経てその創り手側に回りたいと考えるようになるのは自明の理だろう。

それほどまでに、創作すること、表現することは素晴らしい。

小説を書くということ、物語を創るという所業は確かに、魅力的で何物にも代えがたく尊い行為なのだ。

自分は自身を作家未満の人間であると思っているし、人に教授できるような偉そうな立場の者ではないと自覚しているが、

〈ライトノベル新人賞を受賞した〉という経歴には偽りが無いので、そのことについて、少し書いてみたいと思う。

もしも気に障るようなことや間違いがあっても、まぐれで一作品刊行できただけの、〈作家の成り損ない〉が垂れ流す与太話だと思って、聞き流していただきたい。

自分は経験豊富なベテラン作家ではないし、ライトノベル出版社の編集者でもないので、認識の相違などがあるだろう。

少しでも、ライトノベル新人賞を受賞することを志す諸氏の助けになれば良いと思って、自分が実感してきたことや、経験してきたことから書くことができたなら良いと思う。



自分が、小説を書くことになるきっかけ。ライトノベルを書くことにした理由

先ず、自分がなぜ小説を書きたいと思ったのか、ライトノベルと呼ばれるものを書くことに手を出してみようと思ったのかだが、

それについては下記の記事で少し触れているので、興味がある方はお読みいただければ思う。

なぜ一般小説ではなくライトノベルだったかと言えば、やはり自分は子供の頃からテレビゲームなどが好きで、

それらから得た感動や創作に対する衝動・欲求を表現するのには、ライトノベルの方が適していると考えたからだ。

もう一つ付け加えるならば、新人賞の受賞を志すに際して、ライトノベルの方が、一般小説よりもそのハードルが低いだろうと予想した、というのが正直なところではある。

実際は必ずしもそうであるとは言い切れないと思うし、人によっては、一般小説の方が書きやすいということがあるだろう。

そのあたりは各々が自らの資質や、書きたい物語のタイプを鑑みて決めれば良いのではないかと思う。

初期衝動の産物――『ディアヴロの茶飯事』

自分がライトノベル新人賞に応募し、そして受賞したのは、『ディアヴロの茶飯事』というファンタジー小説だった。

後に刊行されたそれは、売り上げがすこぶる悪かったらしく、評価も散々だった。

知名度も低いので知る者は少ないと思うが、確かに商業流通された、自分にとって唯一の刊行物である。

『ディアヴロの茶飯事』紹介ページ

『ディアヴロの茶飯事』を手に取ったことがあるという、稀有な経験の持ち主であればご存知であると思うが、この作品は、極めて読みづらい。

難読漢字や常用外漢字、自作の造語などをページいっぱいに散りばめた挙句、おまけにそいつらに対して〈振り仮名(ルビ)〉を振りまくるという暴挙に出た結果、

一ページ目からして読む気を失せさせるほどに屈折したシロモノが出来上がったというわけである。

しかしこれはもちろん、自ら意図して仕組んだものだ。

敢えて読みづらく歪曲したシロモノとして仕上げたのである。

戦略として、読みづらい文章を書くことを選択したわけだ。

自分にしか書けないものを書かないと意味が無い

『ディアヴロの茶飯事』は、自分にとっての処女作――つまり初めて書いた小説だった。

自らの胸の内、心の奥底に蟠(わだかま)っていたドロドロとしたもの、

創作意欲、表現欲求、初期衝動の洗いざらいを、総じてぶちまけた結果の物だった。

ソイツ――やがて『ディアヴロの茶飯事』と呼ばれることになる文章の羅列を書き始めようとするもっと前、執筆活動を始めるに際して、いくつかの本を読んだ。

小説の書き方の指南書からライトノベルの書き方の指南書、

果ては当時人気が高く流行していた最新のライトノベル作品まで、様々なタイプの本を適当に流し読んだ。

それらからは基礎的な技術や文章作法も学んだが、それよりも一番に学び習得したいと思ったのは、

〈小説を書くということはどういうことなのか〉、

〈文章を書くという行為は一体何を意味するのか〉、

ということだった。

限定された回答の無い、抽象的な命題ではあると理解していたが、にわかにでも良いから、その概要を理解しようと努めたのだ。雲を掴むような思いでその回答を探した。

そうして探求して学び、自身の足りない頭でもって補足するように思考を連ねた結果、導き出された結論は、

〈小説を書くということ〉、

〈文章を書くということ〉はすなわち、

〈自分にしか書けないものを書く〉ということ、

〈自分にしか書けないものを書かないと意味が無い〉、ということだった。

これは必ずしも、〈全ての作家や表現者にも当て嵌まる普遍的な真理である〉と言うわけではないと思う。

少なくとも自分が、

〈どんな小説を書くべきなのか〉と、懊悩と煩悶を繰り返した果てに導き出した答えの一つであるというだけだ。

〈自分にしか書けないものを書く〉、

〈自分にしか書けないものを書かないと意味が無い〉、

という志(こころざし)を認識し、そして掲揚することに至った自分は、真摯な態度でもって小説を書くことへと取り組んだ。敬虔をもってしてそいつへと対峙した。

当時の最新ライトノベル、流行していた人気作品を読んだ時、これはこれで面白いが、自分には書けない物だし、書くべき物でもないと思った。

だから端(はな)からそれと類似するものは書くつもりがなかったし、書きたいとも思わなかった。

漠然とだが、自分には、

〈一般小説の中ならこういう作品が好きだ〉、

〈ライトノベルであればこういう作品が面白いと思う〉、

という嗜好があったので、それらから影響を受けた部分は、多少なりともあると思う。

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

 

【「新青年」版】黒死館殺人事件

 

されど罪人は竜と踊る1 Dances with the Dragons ガガガ文庫 されど罪人は竜と踊る

 

どの作品も、自分よりも遥かに優れた先人たちの創り上げた偉大な作品だが、自分はそれらの猿真似をするわけではなく、

影響を受けながらも、青二才なりに、自らの感覚を一番の拠り所にして自分にしか書けない物を書くように専心した。

そうして出来上がったのが、『ディアヴロの茶飯事』という小説だった。

『ディアヴロの茶飯事』の原稿はライトノベルレーベルを擁する出版社へと郵送され、そして何か月かの後に新人賞を受賞するに至った。

《『第七回HJ文庫大賞受賞作品の紹介ページ』(受賞当時、現在とペンネームが異なっている)》

受賞したのは銀賞だった。

大賞、金賞、銀賞、奨励賞とある内の銀賞だ。

まあ、あんなシロモノに大賞をくれてやるアグレッシブなライトノベルレーベルはそうないだろう。

そのレーベルでは毎年一風変わった作品、売れ線からは逸脱している奇抜な作品が銀賞の内の一席を占めるらしいから、つまりそういうことなのだろうと思う。

なんにしても、〈自分にしか書けないものを書いた〉結果、新人賞を受賞するに至ったわけだ。

取り敢えずは自分の考え方、その戦略の方向性に狂いは無かったと仮定することができるだろう。

自分が見出した、〈自分にしか書けないものを書かないと意味が無い〉んだという分析は、あながち間違いでもなかったというわけである。

自分が書いた物についての独自性、作家としてのオリジナリティが認められたということだ。

自分の、言葉の選択の仕方や硬質な文体、造語の頻出、表記への拘泥、執拗なまでのルビ振り――そういった部分がオリジナリティとして評価されたわけである。

これはなにも、〈新人賞を受賞したかったら奇抜な物を書け!〉と言っているわけではない。

自分の場合は、そういった物がオリジナリティとして評価されたというだけのことで、その独自性と成り得る物は、各人によって異なってくるだろう。



自分の得意武器を見極め、研ぎ澄ませる

例えば、あなたがもしキャラクター造形や、その表現を得意としているのならば、それを磨いて全面的に押し出した作品を書くべきである。

今にも本の中から飛び出して来そうな、生き生きとして豊かなキャラクター描写は、仮にストーリーや文章作法に多少の破綻があったとしても、読み手をグイグイと先へ推し進めさせて、あなたの物語を魅力的に彩るに違いない。

ライトノベルの書き方 キャラクターを立てるための設定・シーン・ストーリーの秘訣

 

例えば、あなたがもしストーリー構成に絶対の自信を持っているならば、その構成が生きるようなキャラクターや文章表現を配して作品を書くべきだ。

読み進めるごとに巻き起こされるワクワクするような展開、鮮やかな伏線回収などは、例えキャラクターや文章表現が凡庸であったとしても、読者のページを捲る手を止めさせることが無いに違いない。

工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素

 

例えば、〈自分はインスタントラーメンが好きだ! インスタントラーメンに対するこだわりを語らせたら右に出る者などいない! ちょい足し食材だって100種類以上試した!〉と自負しているのならば、それを主題にした物語を書くべきだ。

インスタントラーメンに対するあなたの愛情、喉元をほとばしる麺の食感や口中に滾るスープの熱を如実に伝える表現豊かな描写は、読む者の心を十分に捉えて虜にさせるだろう。

つまり作家の個性は十人十色――武器が何であっても構わないのだ。

RPGで例えるならば、騎士は剣を扱うのに長けているだろうし、重装戦士ならば大剣や斧を扱うのに長けているわけで、

騎士が、扱うのに不慣れな弓矢や魔法を修練するよりは、剣の技能を一番に高めさせて研ぎ澄ませた方が、冒険を滞りなく進めさせていくのには適しているだろうということだ。

何でも良いからあなた自身の得意武器を見つけて、それを尖らせることに苦心してみてはどうかと提案しているのだ。

得意武器があったとしても、その他の事を蔑ろにして良い訳ではない

ただ、あなたの得意武器、作家としてのオリジナリティを大事にして、それを磨くことに注力すべきだとは提案しても、

ではその他のことを全く蔑(ないがし)ろにしてしまっても構わないかと言うと、そういう訳でもない。

例えば、キャラクター造形やその描写力が、120点の作品があったとする。

それは確か評価されて然るべき独自性、オリジナリティだが、

代わりに文章作法や国語能力があまりに稚拙で、点数にして20点にしか至らなかったら、その作品が新人賞を受賞するのは難しいように思う。

なぜならば、20点の国語能力では評価者がそれを読み進めるのに難儀するだろうし、

そもそもにして読む気が起こらない、読めた物ではないと、切り捨てられてしまう可能性があるからだ。ストーリー構成力が20点だったとしても同様のことが起こり得るだろう。

実際のところ、20点程度の国語能力では120点のキャラクター描写などできないに違いない。

自分の極めて個人的な印象、主観だが、

あなたの得意武器とする分野で120点を取れる自信があったとしても、その他の苦手な分野において、60点から80点程度は取れるように努力すべきだと思う。

例を挙げるならば、キャラクター造形120点、ストーリー構成65点、文章作法75点、時代性70点……みたいな感じである。

評価者が、その作家に対して突出した何かがあると感じた取った場合、些末な誤字や言葉の誤用で評価を覆すことは少ないと思うが、それでも平均点が高いに越したことは無い。

逆に、独自性やオリジナリティに乏しい作家であったとしても、

全ての分野において95点以上取れることができるような者であるならば、当然、それはそれで高評価の対象になるのだろうと思う。

ハイクオリティの作品をハイペースで生産できるような者、あるいは流行の動向を掴み取ってそれに乗り込むことができるような作家にこそ、高い評価が下されるだろう。

そういうことができる器用な者は、なにも一つの武器だけを研ぎ澄ませて磨く必要も無い。

剣も大剣も斧も弓も魔法も、すべてを器用に使いこなして見せつけてやれば良いだけだ。個人的には、そういうことができる者をうらやましく思う。



〈ライトノベル新人賞を受賞するたった二つの方法〉のまとめ

〈ライトノベル新人賞を受賞するたった二つの方法〉をまとめると、

1、自分の、作家としてのオリジナリティ、つまり得意武器を見つけて、それを前面に押し出した作品を書くこと。しかしだからと言って、苦手分野についても及第点を取れるよう努力を怠らないこと。

2、オリジナリティに乏しくとも、すべての分野において満点に近い、高い表現能力をアピールしたハイクオリティな作品を書くこと。読者のニーズに合わせたり、時流に乗ることができる器用さを備えていることをアピールできるような作品を書くこと。

結局、この二つの内のどちらかの方法に帰結するのではないかと思う。

平たく言えば、〈面白い作品を書くこと〉、これに尽きるわけだ。至極当然のことである。

個人的な実感では、の方法を選択するのは難しい。

ライトノベル新人賞の受賞を志す者の多くは、苦手だと考えている分野も多いはずで、だからこそ自分のように、のやり方を選択するのが賢明な判断なのではないかと思う。

冒頭にも述べたが、自分はベテラン作家ではないし、ライトノベル編集者でもないので、認識の相違はあるだろう。

異論があったとしても、〈作家の成り損ない〉が垂れ流す与太話として受け流していただきたい。

また、ライトノベルのレーベルや出版社によっても選考基準は異なると思うから、必ずしもこの記事で書かれていることがすべてのライトノベル新人賞において当て嵌まるという訳でもない。

そしてこの記事は、〈ライトノベル新人賞を受賞するたった二つの方法〉なわけであって、〈ライトノベル作家として長く活躍し続ける方法〉ではないから、

あなたがライトノベル新人賞を受賞した後でどうすべきかということについては、語られることがない。

自分は一作品を刊行しただけに留まっているわけで、残念ながら〈ライトノベル作家として長く活躍し続ける方法〉については教示することができない。

あなたに、良い作家になって欲しいから

〈ライトノベル作家としてデビューする方法〉は他にも色々とあるだろうが、

個人的には、〈ライトノベル新人賞を受賞して〉デビューするのが正攻法であるように思うし、比較的確率が高いのではないかと考える。

ライトノベル作家を志す諸氏が、どの方法でもってそれを成し遂げようとするかは自由だが、

〈ライトノベル新人賞を受賞する〉というやり方を、選択肢の内の一つとして取り入れてみてはいかがだろうか。

この記事が、〈ライトノベル新人賞を受賞する〉ことを志す者のために少しでも役立てば良い。

もしもこの記事を読んで、ライトノベル新人賞を受賞したという者が現れたなら、こんなにも喜ばしいことは無いだろう。

盛大に傾斜して、いずれ完全に倒壊することになる斜塔の屍を、残骸を乗り越えて、是非とも名のある作家になっていただきたいと思う。



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