思い出のアニメソング――90年代アニソンランキングベスト13・中編




さて、早速だが、〈90年代アニソンランキングベスト13・前編〉の続き、

第5位以降を紹介していこうと思う。

当記事に来訪したのが最初で、〈90年代アニソンランキングベスト13・前編〉の方にはまだ目を通していないという人がいたなら、

下記リンクから閲覧してみて欲しい。

 

第5位『さよならbyebye』――〈幽☆遊☆白書〉エンディングテーマ

ランキングもいよいよベスト5、佳境に入って来たわけだが、ここで再び、〈幽☆遊☆白書〉の楽曲がランクインする。

〈幽☆遊☆白書〉は、オープニングテーマこそ『微笑みの爆弾』で固定されて変わることがなかったが、エンディングテーマの方は計四度の変更があり、全五曲が使用された。

『さよならbyebye』は、二番目に使用されたエンディングテーマで、歌っているのは『微笑みの爆弾』と同じく馬渡松子さんだ。

エンディングテーマにふさわしい、寂しげな雰囲気のバラードで、

美しく流麗なメロディが耳ざわり良く、ミドルテンポながら、パートによっては早口で歌う箇所もあり、メリハリが利いていて、上手に歌えると非常に心地良い。

リーシャウロン氏のあてた歌詞を見てみると、この歌は一つの恋愛の終わり――男女の別れを描いた物のようで、

〈悲しいけど、悲しまないで。お互いが前へ進むための、「さよなら」だから〉、

といったようなことを歌っていると理解する。

馬渡松子さん自身を彷彿とさせる歌詞の主人公は、恐らく、弱みを見せたり女々しさを見せたりするのが苦手なのだろう。

不器用で、つい強い女、聞き分けの良い女を演じてしまい、本当はまだ好きなのに、

相手のことを想っているからこそ、相手の幸福な未来を願っているからこそ、自ら別れを切り出してしまう。

そうして後になって、裏で人知れず涙を流しているような女性像を、『さよならbyebye』の歌詞からはイメージすることができる。

 

実らない想いの数 増えるほど 優しくなってきたけれど

 

という二番の歌詞からは、歌詞の主人公が失恋を重ねて来ていて、悲しい想いを多くしているということが解るし、

間奏で流れる、

 

いいよ 返さなくていいよ CDも ブルースハープも

 

という歌詞も妙に物悲しい。

しかしその後も、

 

おめでとうと どちらか言えるとき 会ってみたい

 

と歌ったりしていて、これは、

〈二人のどちらかが結婚した時、お互い、未来を向いた状態で再会したいね〉

といった意味に解釈でき、

主人公の女性が、どこまでも潔く、〈男らしい〉ことが窺え、

歌詞の主人公のポリシー、あるいは恋愛哲学のような物を垣間見ることができる。

作詞をしたのはリーシャウロン氏なのだが、歌詞のイメージなどから、

自分はどうしても馬渡松子さんが作詞をしたように思えてしまって、勘違いをすることがある。

それくらい、リーシャウロン氏が馬渡松子さんのキャラクターを把握していて、

彼女が歌うのにピッタリの歌詞をあてるのが、巧みであるということだろう。

一方、『さよならbyebye』のメロディの裏で流されるアニメーションは、極めてシンプルなのだが、こちらはこちらでとても良い。

冒頭――螢子の手にしていた一枚の紙切れが手放され、風に運ばれてゆく。

画面は風に流される紙切れの行方を追うように、横に長く長くスクロールしていき、やがて幽助と螢子のいる場所へと辿り着く。

幽助が、足下に落ちている紙切れを目に留め、拾ってみると、

それは幽助、桑原、飛影、蔵馬、螢子、ぼたんが映し出された、いつかに撮られた写真だった――という物だ。

この、最後にアップで映し出される六人の写真は、少し動く(アニメーションする)のだが、それがとても良い。

聞こえないが、「はい、チーズ」の声に合わせて、六人はそれぞれにポーズする。

幽助は親指を立てて男らしく構え、桑原は満面の笑みで手を掲げて、挨拶するような態勢を取る。

今にも、

「写真だと……くだらん」

といったセリフが聞こえて来そうな飛影はそっぽを向き、

蔵馬はただやさしく、やわらかに微笑む。

螢子は可愛らしく笑いかけ、

その肩へと手をやって、彼女の保護者のような立場でポーズするぼたん――

六人それぞれの個性がにじみ出た、たった一秒にも満たない短いアニメーションが、

その一瞬で、六人のキャラクターとその関係性とを確かに表していて、なんだかすごく胸に迫る物があるのだ。

この『さよならbyebye』のアニメーションは、恐らく、特段の深い意味が込められて作られた物ではない。

ただなるべく少ない動画枚数で、印象的な、良いアニメーションを作ろうとした結果、こういう構造になったのだと思う。

しかし確かにそれは功を奏して、最小限の動き、シンプルな構成ながら、非常に美しく心に響くエンディングアニメーションが出来上がったという好例なのだと思う。

そして、その簡素でシンプルなアニメーションを、十分に良質な物として成立させているのが、良曲『さよならbyebye』であるというわけだ。

第4位『帝王1~野望』および『帝王2~過去』――〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉挿入曲

第4位の『帝王1~野望』および『帝王2~過去』は、

毎週放送ではなく、単発のテレビスペシャルアニメとして放送された、

〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉の挿入曲だ。

……と、ここでお気付きの方もいるかもしれないが、第4位は、〈挿入曲〉なのである。

当記事は、タイトルに〈90年代アニソンランキングベスト13〉と謳っているにも拘わらず、

歌の使用されていない、インストゥルメンタル曲をランクインさせてしまったわけだ。

第6位の『夢冒険』に引き続き、記事タイトルに適合しない楽曲をランクインさせてしまったことについては申し訳なく思う、だがしかし、

『帝王1~野望』および『帝王2~過去』は超名曲であり、ランクインさせないわけにはいかなかったのだ。

また、インストゥルメンタル曲だけのランキング記事を作成する予定も無かったため、当記事において紹介するより他無かった。

そして楽曲だけでなく、

この〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉というスペシャルアニメは、非常によくできた素晴らしい作品であるため、本編の内容と合わせてどうしても紹介しておきたかったのだ。

とどのつまり何が言いたいのかと言うと、〈細かいことは言わずに許してネ〉、ということである(笑)

さあそれでは、早速紹介に移ろう。



〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉という作品

この〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉という作品は、

当時人気が高まっていた対戦型格闘ゲーム〈餓狼伝説2〉を原作として、概ねその設定やストーリーに沿って制作された、単発のスペシャルアニメだ。

〈ストリートファイターⅡ〉同様、自分は対戦型格闘ゲームが好きでハマっていたから、

人気作である〈餓狼伝説2〉がスペシャルアニメになって放送されると知り、見ないわけにはいかなかった。

 

実はこの〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉の前に、

〈バトルファイターズ 餓狼伝説〉という一作目があったのだが、

こちらの方はその存在を知らなかったため、リアルタイムでは見ることがなかった。

後になって知ってから、その一作目を見てみたが、それほど熱中できるような物ではなく、

続編である〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉の面白さと比べてしまうと、どうしても見劣りするなという感想を抱いたのが正直なところだ

(余談だが、原作である対戦型格闘ゲームの方でも、一作目である〈餓狼伝説〉はいまひとつで、〈餓狼伝説2〉から格段に面白くなったという印象が強い)。

それほどまでに、この〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉という作品は素晴らしいのだ。

『帝王』と冠せられた二つの名曲と、ヴォルフガング・クラウザーというキャラクター

さてこの『帝王』という挿入曲だが、上記からわかる通り、アレンジの異なる二つのタイプが存在する。

『帝王1~野望』は、アニメの冒頭のシーンで、

『帝王2~過去』は、アニメのクライマックスのシーンで使用され流されるのだが、

そのどちらも、今作におけるボスキャラクター、ヴォルフガング・クラウザーのテーマ曲であると認識してもらえればまず間違いない。

ヴォルフガング・クラウザーは、ドイツの貴族の末裔で、シュトロハイム家の現当主。

居城に設置されているパイプオルガンを弾きこなし、貴族然とした優雅な身のこなし、

丁寧な物言いをするのとは裏腹に、恐るべき戦闘能力・格闘センスを備え持つ、残忍な男でもある。

十六歳の時、シュトロハイム家の当主継承の折、通過儀礼として自身の父・ルドルフと闘い、そして殺めた過去さえ持つ。

自身の異母兄であるギース・ハワードを打ち負かした、テリー・ボガード(本作の主人公)に興味を抱き、

クラウザーがギースに接触するところから、〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉のストーリーは始まる。

ちなみに、

ゲーム・餓狼伝説シリーズにおいて、不動のボスキャラクターであり、主人公テリーにとって、父親のカタキでもあるギース・ハワードと、

ゲーム・餓狼伝説2におけるラスボス、ヴォルフガング・クラウザーが異母兄弟であるという設定は、原作のゲームには無かったもので、

このスペシャルアニメ〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉において、初めて設定させられたものだ。

恐らくは、このアニメの監督である大張正己氏が考案し、後付けした設定なのではないかと想像する。

餓狼伝説シリーズにおける二大ボスキャラクターの両者が異母兄弟であったという設定は、ゲームには直接関与しない物ではあるものの、

ストーリーに深みを持たせ、その世界観をいっそう魅力的な物にさせるのに一役買っていると思う。

さてストーリーの解説に戻るが、

冒頭、外出からドイツの居城へと帰還したクラウザーは、そこに設置された巨大なパイプオルガンの前へと座り、そして弾き始める。

その、クラウザーがパイプオルガンで奏でる楽曲こそが、『帝王1~野望』であり、

ストーリーのオープニングをドラマティックに演出する、秀逸なBGMとして機能しているのだ。



『帝王1~野望』

パイプオルガンを弾くクラウザー。

その手元が映し出され、華麗な指捌きが鍵盤の上を躍る。

荘厳なパイプオルガンの音色で『帝王1~野望』が奏でられる中、アニメーションは、クラウザーの回想シーンを映し出す――

――そこはうらぶれた夜の街角、アメリカのサウスタウン。

リチャード・マイヤー(ゲーム〈餓狼伝説〉の登場キャラクター。カポエラの使い手)の経営するパオパオカフェ、

そのカウンター席で酒を飲むビリー・カーン

(ゲーム〈餓狼伝説〉の登場キャラクター。三節棍を武器とする棒術の使い手。ギース・ハワードの側近で、片腕のような存在)

の元を訪れる、一人の来客があった。

闘牛士のような出で立ちをしたその男はローレンス・ブラッド――ヴォルフガング・クラウザーの側近の戦士であった。

ローレンスは片腕に、気絶した一人の男――ギース、ビリーの部下にあたる、リッパーの身体を抱えている。

すでに気絶しているリッパーの身体を店内へと放り投げ、ビリーへと、不敵に笑むローレンス――

――場面は転換し、緑深いどこかの山中。

巨大ヘリコプターが着陸し、無数の戦士たちが、タラップを降りて来る主――クラウザーを出迎える。

ヘリから地上へと降り立ったクラウザーへ、戦士の中の筆頭と思しきローレンスが現れ、恭しくクラウザーへと頭を垂れる。

クラウザーへと献上するように差し出されたローレンスの手には、ビリー・カーンの愛用武器である三節棍が握られていた。

ビリーの三節棍を手に、山中を行くクラウザー。

そして、そこに現れた滝の流れる岩肌へと、ブリッツボール(クラウザーの必殺技。火球にも似た電光の弾丸)を撃ち放つ――

ブリッツボールによって破壊され、露わになった滝の裏側の洞窟。

そこで独り、左目に包帯を巻かれた姿で座禅を組んでいたのは、クラウザーの異母兄、ギース・ハワードだった。

洞窟の奥へと座すギースへ、ビリーの三節棍を放り投げるクラウザー。

「それは……!」

クラウザーが、自身の側近であるビリーを手にかけたことを悟るギース

(恐らくローレンスは、ビリーから、ギースの潜伏場所を聞き出し、クラウザーへと教えた)。

「探したよギース」

「貴様、クラウザー……!」

「これがサウスタウンの支配者の成れの果てとは……」

一輪のバラを手に愛でながら、哀れな姿へと成り果てたギースへ、語り掛けるクラウザー。

「貴様ほどの男がわざわざ出向いて来るとは……何の用だクラウザー!」

「ちょっとした気まぐれってヤツさ。退屈しのぎにオマエをそんな姿にしたヤツと、遊んでみたくなったのさ」

ギースはクラウザーの言うのを聞いて薄く笑みを浮かべ、そして口を開く。

「……良かろう、教えてやろう。ヤツの……テリー・ボガードのことをな……!」

クラウザーはギースへと、満悦そうに笑みを投げ掛ける――

――そこで場面は転換し、再び、パイプオルガンを弾くクラウザーの手元が映し出される。

クラウザーの回想シーンの終わりを教えるように、荘厳な音色の『帝王1~野望』の旋律も、終局を迎える――

「フフフフフフ……テリー・ボガード……か」

パイプオルガンを弾き終え、不敵に笑うクラウザー。

そしてそこへ、〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉のタイトルバックが映し出され、壮大なドラマの始まりを教える――

――と、このように、冒頭からドラマティックなストーリーが展開させられ、視聴者を物語へと強く惹き込むのだ。

クラウザーが『帝王1~野望』を弾きながら、その曲の流れている最中で回想するという構成が、非常にスタイリッシュで秀逸なのである。

またパイプオルガンの音色が美しく、『帝王1~野望』の神聖な旋律を際立たせている。

そしてその旋律がクラウザーというキャラクターを魅力的に演出し、ギース、テリーといった人物たちとの関係性をも、いっそうドラマティックに仕立て上げているのだ。



〈見どころ・その1〉激闘! テリーVSキム・カッファン!!

さて、『帝王2~過去』の方の解説は一旦後にして、アニメの見どころをいくつか紹介させていただこう。

見どころの一つ目は、物語序盤で、主人公のテリーが、キム・カッファンと闘うシーンである。

キムはテコンドーのチャンプであるらしく、ギースを倒したことで名の広まっていたテリーを訪問し、対戦を挑んで来たのだ。

キムの礼儀正しさに敬意を表し、対戦の申し込みを受け入れるテリー。

港の波止場で、二人は互いに構えを取り、対峙する。

「コンヌンソギの構えか……!」

キムのとっている構えを目にして、口を漏らすテリー。

上空を流れる白い雲が影を作り、その影に紛れるようにして、初めに動き出したのはキム――キムは飛び蹴りを放ち、テリーはそれを難なくかわす。

その後も蹴りと拳の応酬が繰り広げられるが、両者は互いにそれらを受け流し、決定打には至らない。

そこで、キムの肘打ちをジャンプして避けたテリーが、空中からバーンナックルを撃ち放ち、それがキムの顔面にクリーンヒット――キムはダウンを喫する。

しかし一方、空中から着地したテリーの、

キムとの対戦前、落下する鉄骨からに人々を助けるために使った足首に、痛みが走る――

テリーの一瞬の怯みを、見逃さなかったキム。

ダウン状態からすかさず這い上がり、大きくジャンプした空中から、〈飛翔脚〉を撃ち放つ――〈飛翔脚〉の連続蹴りの内の数発が、テリーの顔面にヒット。

「俺をマジにさせる、イイ技だったぜ……!」

テリーは吹き飛ばされるも、受け身を取り、自分を本気にさせたことをキムに教える。

その後は、前作〈バトルファイターズ 餓狼伝説〉において体得した八極正拳の技、旋風拳によってキムを打ち負かす――といった流れになっている。

このテリーVSキムのシーンは、めちゃめちゃ滾る。

カンフー映画を彷彿とさせるイントロのBGMが印象的で、とにかくカッコ良い

(恐らくは、『テリー・ボガード』というタイトルのBGM)。

このBGMは、『帝王』に負けずとも劣らない秀逸な挿入曲で、二人のバトルシーンを熱く盛り上げているのだ。

アニメーションの方はと言えば、こちらもリズミカルかつスピーディーで、

特に、テリーがバーンナックルを繰り出すところから、キムが〈飛翔脚〉を放つまでの一連の流れが、最高に燃える。

キムは、ゲーム〈餓狼伝説2〉における超必殺技・〈鳳凰脚〉こそ繰り出さないが、〈飛翔脚〉や蹴り技の数々で十分に善戦し、テリーとのバトルを盛り上げてくれる。

キムの〈鳳凰脚〉が見たい人は、今作の好評を受けて制作され、テレビから映画へとその媒体をステップアップさせたシリーズ三作目、

〈餓狼伝説 -THE MOTION PICTURE-〉を見よう。

ちなみに、この〈餓狼伝説 -THE MOTION PICTURE-〉は、エンターテイメントとしてのスケール感を大幅に増していて、素晴らしく面白い作品ではあるのだが、

それでもやはり〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉の面白さには敵わないと、個人的には思っているのだ。

〈見どころ・その2〉復活を遂げる餓えた狼――少年トニーの奮闘に、自らの幼き日の影を重ねたテリー

こちらも、自分が非常に好きなシーンだ。

キムとの戦いの後、テリーは自分を訪ねて来たクラウザーと対峙する。

二人は闘うが、クラウザーの圧倒的な戦闘力・格闘センスを前に、テリーは無残にも敗北してしまうのだ。

テリーはクラウザーに敗北したことから、戦うという行為の底知れぬ恐ろしさに脅え、

果ては心を腐らせ、働きもせずに酒場へと入り浸り、酒に溺れる生活を繰り返すようになってしまう

(公園で絡んで来た男たちへ、度の過ぎた制裁を食らわせ、一時は収監されるまでに至る)。

しかしそんなテリーを気に掛け、その行く先々を追い続ける一人の少年がいた。

少年の名はトニー。

テリーとキムとが闘う現場にい合わせて、それを見て感銘を受けたことからテリーへと憧れを抱き、弟子入りを志願した少年だった。

病気がちの母がいることなどを理由に、トニーはテリーに弟子入りを断られていたが、諦めることができずに、

テリーがクラウザーに負けて心を腐らせた後も、ずっと彼の後を追い続けていたのだ。

ある日場末のバーで、寄り添って心配するトニーをよそに、いつものようにテリーが飲んだくれていると、

そこへ、元ヘビィ級のチャンプだったというアクセル・ホークと名乗るボクサーが現れ、試合を申し込んでくる。

アクセルが、酔い潰れてカウンターテーブルへと突っ伏すテリーの顔を持ち上げて見れば、その表情は死んでいて、

名を轟かせている一流格闘家、テリー・ボガードの面影はそこに無かった。

「――止めろ! テリーの一番弟子、トニー様だ!」

そこへ、トニーが割って入る。

トニーは、アクセルの舎弟にテリーをバカにされたことを怒り、

「なんだと、オマエの相手なら、このオレで十分さ!」

と、アクセルの舎弟に対し、テリーが相手するまでもないと、啖呵を切る。

そこで、妙案を思い付いたらしいアクセル。

「……そうか、よし。お前相手をしてやれ」

舎弟へと、トニーと闘うこと命令するアクセル。

アクセルの舎弟は、子供を相手にすることに気が進まないが、兄貴分の命令とあっては逆らえない。

かくしてアクセルの舎弟とトニーとは対峙し、試合を開始させる。

威勢よく猛り、拳を走らせるトニー。

しかしアクセルの舎弟の放ったパンチに、いとも簡単にダウンさせられてしまう。相手は大人で、本格的に修練を積んだボクサーなのだから当たり前だ。

その後も、諦めずに向かって行くも、幾度なく重いパンチを浴びせられ、完膚なきまでに打ちのめされるトニー。

二人の試合する後ろでは、相変わらず酔い潰れているテリーが、顔をカウンターテーブルに突っ伏して死んだようにしていた。

テリーは果たして起きているのかいないのか、その耳にはかすかに、トニーが容赦なく殴られ続ける音だけが響き渡っているらしかった――

――そこで場面は転換する。

テリーの見ている夢の中なのか、

場所は、いつかのサウスタウン。

まだ幼い少年だった頃のテリーが、そこにはいた。

少年テリーは街の格闘家に勝負を挑み、しかし完膚なきまでに打ちのめされる。

「強く、強くなりたい……強くなって、父さんのカタキを討ちたい……!」

(テリーは父親であるジェフを、ギース・ハワードによって殺されている)

地面へとダウンさせられ、そのアスファルトの上で涙を流す少年テリー。

少年テリーはそれから様々な格闘技へと身を投じ、修練を重ねてゆく――

――そして何年後かのサウスタウン。

そこには、まだ少年の面影を残しながらも、たくましく成長を遂げたテリーの姿があった。

対峙しているのは、いつかに負かされた街の格闘家。

「オマエはいつかの小僧。少しは強くなったか?」

少年テリーは、格闘家へと向かって行き、そのパンチをまともに顔面に受けるも、さしたる痛みを感じている様子はなく、目を見開き、まるで嬉しそうに微笑む。

少年テリーは、以前より明らかに強くなっていたのだ。

少年テリーは一転、猛攻に出、ついにその格闘家を打ち負かす。

自身の成長を実感し、嬉しそうに笑む少年テリー――

――そこで再び場面は場末のバーへ。

酔い潰れてカウンターテーブルに突っ伏すテリーの耳には、トニーの殴られる音が響いて、テリーを浅い眠りから覚まさせたらしかった。

テリーが振り返って見たそこには、何度打ちのめされても立ち上がろうとする、ぼろぼろになったトニーの姿があった。

目に映し出されたトニーの姿に、幼き日の自身の幻影を見るテリー。

何度打ちのめされても立ち上がろうとするトニーの姿は、まだ幼かった頃の自分自身――いつかの少年テリーそのものだった。

まるで悪夢から覚まされたように、目を見張るテリー。

そこで、一方的にトニーを殴り続けることに気分を害したアクセルの舎弟が、試合を放棄する。

アクセルは舌打ちし、最後まで闘う意志を潰えさせなかったトニーこそが勝者であることを教える。

気持ちの糸が切れ、ついに床へと倒れ伏すトニー。

完全に目を覚ましたテリーが駆け寄り、トニーの身体を抱く。

「へへ……テリー、おいら勝ったぜ。このお守りのせいかな……」

ぼろぼろの身体で、そう言って開かれたトニーの手に握られていたのは、

いつの日か、心を腐らせてしまった時に投げ捨てられた、くしゃくしゃになったテリーのグローブだった

(グローブは、格闘家としてあるテリーの、〈闘う意志がある〉ことの象徴のような物)。

トニーは、テリーの知らぬ間にそれを拾って、お守り代わりに、大切に持ち歩いていたのである。

「これは……トニー、お前……!」

テリーは目を見開いて驚嘆し、そして、次に込み上げたのは怒り――

そう、それはアクセルと、そして他ならぬ、不甲斐ない自分へと向けられたものだった。

怒りに打ち震えながら、アクセルに問うテリー。

「(アクセル・)ホークとか言ったな。貴様なぜこんなことを……!」

「知れたことを。オマエをその気にさせるためよ」

「そんなことのために、こんな酷(むご)いマネを……!」

トニーの身体をやさしく床へと横たえ、グローブをその手に嵌めるテリー。

その顔は少し前のテリー――闘い続けることから逃げようとはしなかった、凛々しい戦士の物へと、取って替えられていた。

「……良かろう、相手になってやる!」

対峙するテリーとアクセル。

ヘビィ級のボクサーだけあって、体格は一回りもアクセルの方が大きい。

先に動いたのはアクセルで、その渾身のパンチがテリーの顔面を捉える。

テリーはまともにパンチを受けるが、痛みを感じている様子もなく、目を見開き、

まるで嬉しそうに微笑む――それはいつかと同じ表情、修練を重ねて強くなった少年テリーが、格闘家のパンチを顔面に受けた時に見せた物と同じだった。

まるで効いていない様子のテリーにたじろぎながら、二発目のパンチを繰り出すアクセル。

しかし今度は完全にそれを見切って、かわしたテリーが拳を放つ。

そしてたったその一撃でアクセルは床へと沈められ、テリーの潜在能力に驚嘆させられながら、気を失うしかないのだった。

「す、すげえや……やっぱりテリーが、最高だ……!」

床へと倒れ伏しながら、自分にとってのヒーローが帰って来たことに喜び、そして安堵して、眠るように目を閉じるトニー――という、とても感動的なシーンなのである。

いや、予想以上に長くなった(笑)

それくらい、このシーンは自分の心を動かして、強く印象に残っているのだ。

少年テリーが格闘家に打ちのめされ、〈強くなりたい〉と希求しながら涙を流すシーンや、

何度打ちのめされても立ち上がろうとするトニーの姿は、〈男の子〉であれば誰しも胸に響いて熱くさせる物があるだろう。

〈トニーが殴られても殴られてもアクセルの舎弟へと立ち向かって行き、相手をうんざりさせることで、結果的に勝者という形になる〉、

という展開は、

感動回として有名な、〈ドラえもん〉第6巻・「さようなら、ドラえもん」における、

〈どれだけ殴られても執拗に立ち向かって行くのび太と、それを気持ち悪がって、ついには退散するジャイアン〉、

の構図と類似して、彷彿とさせる。

監督の大張正己氏が、〈ドラえもん〉からインスピレーションを得てこのエピソードを発想したかどうかはわからないが、

いずれにしても、このシーンがホロリと涙させる良質のドラマを形作っているということには違いないのだ。

この、テリーがクラウザーに負け、心を腐らし、酒に溺れ、

しかし自分をヒーローのように慕うトニーの奮闘をきっかけに再起する、という一連の流れは、ストーリーとして非常によくできていると思う。

どんなにいい大人の男でも、カッコ良く見えるヒーローでも、

心を腐らせることはあるし、子供の頃は誰もが弱かったんだということを、恥じないで教えてくれる、素晴らしいストーリー展開だと思うわけだ。

『帝王2~過去』

さて『帝王2~過去』の方はというと、物語のクライマックスのシーンで使用される。

物語終盤、再起したテリーは、トニーと共に、周囲を湖に取り囲まれ切り立つ崖の上にあるクラウザーの居城を訪れ、両者は再び相まみえる。

一度目に邂逅した時よりも、明らかに強くなり、

そして何より、闘うことに正面から向き合うことができていたテリーは、クラウザーと互角に渡り合い、両者は死闘を繰り広げる。

波動旋風脚、ブリッツボール、バーンナックル、カイザーウェイブ、パワーゲイザー――

様々な大技の応酬が繰り広げられ、その激しさから、城は半壊させられるまでに至る。

テリーとクラウザーとは、互いが死力を尽くし合い、それでもなお、両者は闘うことを止めることができない。

そうして二人が最後に辿り着いたのは、小手先の技や戦略を廃した、ただの殴り合い――純然たる肉弾戦だった。

そしてその純然たる肉弾戦の果て――テリーの渾身の拳が数発、クラウザーの腹部を捉え、遂に長きに渡った勝負が決せられる――

「……どうやら、私の負けのようだ。だが悔いは無い……こんなに充実した思いをしたのは、十何年ぶりだからな……」

自らの敗北を悟り、息も絶え絶えに語るクラウザー。

「……シュトロハイム家の当主が、生き恥を晒すわけにはいかんのでね……」

語りながら、なぜか後方へと後ずさってゆくクラウザー。

そのすぐ背後には、二人の死闘によって半壊した壁に大穴が空いて、断崖絶壁に立つ城の外へと通じられていた。

「さらばだ……テリー」

クラウザーは壁に空いた大穴から、自ら身を投げる――

――ここで挿入される、『帝王2~過去』の劇的なイントロ。

「クラウザー……!」

テリーが驚嘆するのも束の間、真っ逆さまになったクラウザーの身体は、みるみるうちに落ちてゆく。

そして空中を落下していくさなか、クラウザーはその瞳から、一滴の涙を、空へと落とした――

「父さん……」

それは、シュトロハイム家の当主としてふさわしくあるよう、クラウザーに厳しくあり、

そして最期は、息子であるクラウザーの手によって殺められた父・ルドルフを想って零された涙だった。

クラウザーの身体は断崖絶壁の下に広がっている湖へと落下し、その底へ、深く深く沈んでゆく。

その少し後、クラウザーの身体から遅れること数秒後、クラウザーの零した一滴の涙が湖面へと落ちて、悲しげに波紋を作る――

――その一部始終を、湖上に停泊させたモーターボートから見ていた男がいた。

男の名はホッパー――クラウザーの異母兄、ギース・ハワードの側近だった。

ホッパーは口の端をゆがませ、ニヤリと笑む。

一方、城に残されたテリーとトニー。

トニーは、テリーとクラウザーの死闘を見て、〈闘う〉という行為の恐ろしさを、酷(むご)さを、やり切れなさを、未熟ながらにも感じ取っていた。

「テリー……俺」

「わかったろ。闘いは虚しさしか残しちゃくれない。さあ、送ろう」

闘うことの虚無感を教えて、トニーを諦めさせるテリー。

テリーは誰よりも、闘うことの凄惨や孤独を知っているから、トニーには自分と同じ道を歩んで欲しくなかったのだ。

――場面は変わって、そこに映し出されたのはギース・ハワード。

「愚かなり、クラウザー!」

ホッパーから事の次第を報告されたらしいギースが、左目に巻かれていた包帯を剥ぎ取り、空へと投げる。

その顔には、左目にテリーから負わされた痛々しい傷が残っていたが、

しかしギースの表情は晴れ晴れとしていて、今すぐにでもテリーと決闘して差し支えないほどに壮健そうな様子だった。

まるでクラウザーではテリーに勝つことができないと、わかっていたかのような、

テリーを倒せるのは自分しかいないと確信していたような、

そんな様子で、ギースは盛大に高笑いをするのであった――

――と、ここで、『帝王2~過去』のドラマティックな旋律も、終局を迎えるのだ。

劇中の内容からもわかる通り、『帝王2~過去』は、

クラウザーの父への想い、あるいはシュトロハイム家という苛烈な家系に生まれた、クラウザーの悲哀、

その運命の残酷さのような物を、よく表して奏でていると思う。

『帝王1~野望』が荘厳であるのに比べて、

『帝王2~過去』は、音色へと哀愁を湛えさせていて、

ベートーヴェンではないが、サブタイトルに『悲愴』と銘打ちたくなる、そんな旋律を奏でているのだ。

バトルファイターズ餓狼伝説・SOUND ACTION

 

クラウザーにしろテリーにしろ、〈闘う〉という行為に魅せられた者の孤独、

決して真の幸せは掴むことができないという哀しみを、孤高を、如実に表現しているのが、

『帝王』という二種類の楽曲の素晴らしさであるというわけだ。

〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉という作品に関しては、特に強い思い入れがあるから、

他にも色々と紹介したいことがあるのだが、長くなりすぎてしまったため、一旦ここで終わりにしたいと思う。

いつか〈完全版〉と称して、〈バトルファイターズ 餓狼伝説2〉を詳細に紹介する記事が書けたなら良い。

 

……と、ここでまた一旦区切りを付けようと思う。

第4位である、『帝王1~野望』および『帝王2~過去』の紹介がここまで長くなるとは、自分でも予想が付かなかった(笑)

第3位以降は、

〈思い出のアニメソング――90年代アニソンランキングベスト13・後編〉、

で紹介したいと思うので、そちらの方にも目を通していただければ幸いだ。




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